「なぜか、あの日、目覚ましが鳴らなかったんです・・・それで遅刻したんです・・・1時間」
と言ったのは、33歳の男性だった。

「地下鉄で私にドリンクをぶちまけた者がいて、着替えるために、一度家に戻ったんです」
と言ったのは、45歳の会社役員だった。

「突然、車のエンジンがかからなくなったから、修理屋と連絡を取っていたよ」

「昨夜ちょうど息子が生まれたから、病院にいて午前中は休むという連絡をボスにしたんだ」

「新しい靴で出勤して、靴擦れができてしまったから薬局によって絆創膏を買っていたんだ、そうしたら、バスに乗り遅れてしまったんだ」

「その日にかぎって、息子がひどいぐずり方をして、着替えと朝食に1時間以上かかってしまったの」

理由は様々だが、彼ら彼女らは、その日時間通りに出社できなかった。

その日とは、2001年9月11日で、彼らの出社場所はWorld Trade Centerだった。

彼らは時間通りに会社に行かなかったことで死を回避したわけである。