3つのエピソードを記す。

1つ目はブラジルで大きな話題となったニュース。

ブラジル屈指の富豪であるチキーニョ・スカルパ氏が、100万ドルもするベントレーを埋葬すると発表した。
メディアは大きく取り上げ、スカルパ氏をネガティブに報道した。その贅沢なしぐさと貴重な車の破壊に対して強い批判が寄せられることになった。
「なぜ車を寄贈しないのか?」「この老人はどこまで現実離れしているのか?!」
「暴走老人の末路か、こういう年の取り方はしたくない」
報道のほとんどが、こんな調子だった。
しかし、スカルパ氏は宣言通りにベントレーを埋める巨大な穴を掘り、ベントレー埋葬の準備が整ったことをメディアに伝えた。
メディアが集まり、いざ埋葬しようとした瞬間、彼は車から降り、埋葬を取りやめることを宣言しカメラに向かってこう言った。
「私は、ここしばらく非難の目にさらされてきた。非難するのは、私が100万ドルのベントレーを埋葬しようとしたから。しかし、現実はほとんどの人がこの車より価値のあるものを日々埋葬しているのにだ」
スカルパ氏は静かに言葉をつづけた。
「心臓、肝臓、肺、目、腎臓・・・移植を待っている人がたくさんいるのに、多くの命を救うことのできる健康な臓器ごと埋めてしまっているんだ」、と。

2つ目のエピソードはタイの有名なCM

喫煙所に幼い子供がやってきて、「火を貸してくれ」と慣れた手つきで煙草をちらりと見せるとこから、このCMは始まる
煙草の煙を吐き出し、大人たちは「まじか?」という感じで驚き、タバコがいかに体に悪いかを子供に説明する
煙草に含まれる成分は殺虫剤と同じ成分であらゆる臓器に悪いこと、ひどい病気の原因になり、苦しんで死ぬ可能性が高いこと
頭が悪くなるということを伝えた者もいた。

子供は、それを聞いた後、一枚のメモを差し出し、渡すとすぐにその場を離れた。
大人たちは煙草を持つ手でメモを開き、表情を変える。
煙草を灰皿に捨て、メモにもう一度目を落とす。
メモには、「あなたは私を心配してくれた、今度は自分を心配して」と書かれている。

最後に、「このキャンペーンのあと禁煙セラピーへの相談が40%増えた」という一文でCMは締めくくられる。

最後のエピソードはアメリカのCM。

架空の仕事を作ってみました。その仕事の募集をSNSで行い面接を録画してみた、という文章で始まる。

面接官が仕事の内容を淡々と説明する
簡単な仕事ではないこと、非常に重要なポジションであること、就いてもらう仕事の役職は「現場総監督」であること。
続いて、高い能力と責任が付きまとうことが説明される。
医療知識や、栄養や料理に関する知識、財務知識も必要で、トップレベルのコミュニケーション力が求められることが伝えられた後に
仕事は原則立ち仕事であること、休憩時間がないことが伝えられる。
応募者は辟易とした表情で勤務時間を尋ねるが、面接官は「1週間7日、24時間、365日勤務である」ことを淡々と伝える。
「それは違法ではないですか?」「それはひどい」「クレイジーだ」と口々に答えるが、面接官は言葉を続ける
頻繁にどうしたらいいのかわからない混沌とした状況が発生し、そういう状況が現れたら時に徹夜で対応する状況が現れる。
休暇はなく、クリスマスやニューイヤーは平常時にも増して忙しくなること
そして最後に、仕事を通じて得られる喜びや幸福感はどんな仕事よりも高いレベルであることを伝える

「非人道的」だと非難をする応募者は、まだ良い方で、大半の応募者はあきれて言葉が出なくなっていた。
ここからとどめのやり取りが始まる。
「この仕事の給料はゼロです」と面接官が告げるからだ。
「は?」と聞き返す人、拒絶を叫び声で表す人、そんな馬鹿なと笑い出す人、「何かの悪い冗談のよう」と言う人までいた

これらの声を聴いた後、面接官は「しかし今、すでにこの仕事に従事している人はたくさんいる」ことを告げる
いるはずがない、と言わんばかりに「誰?」と聞く応募者

面接官は間髪入れずに答える「母親だ」、と
それを聞いた応募者は、瞬時に母親からの惜しみない愛情を想い出し、涙を流す人もいた。