B・F・スキナーというアメリカの心理学者が、ハト用の実験装置を設計しました。その中にはボタンが一つあるだけで、他には何もありません。
ハトがボタンを押すと、小さな扉(ハッチ)が開き、餌が出てくる仕掛けです。豆粒ほどの脳しか持っていないハトですが、すぐにコツをつかみます。すぐにボタンを押して餌を集めるようになります。ボタンを押す、餌を出す。 それを繰り返し行うようになるまであまり時間はかかりません。

次の実験装置はボタンも何もないケージですが餌がランダムに出るようにします。
そのケージにハトを入れるとただ座って餌を待っているのではなく、3/4のハトは奇妙な行動を取り始めるのです。
あるハトは何度も何度も羽ばたく、あるハトはクルクルと回り続ける、またあるハトは箱の周りを反時計回りに止まらずに走り廻りました。

餌を不規則に出した時、1羽のハトはたまたま羽をばたつかせていました。すぐに、そのハトはその行動と餌の放出を関連付けて考え、繰り返し始めます。
すると驚いたことに、しばらくして餌が出てきたではありませんか!そのハトはこれで餌が手に入るという確信をさらに深めて、繰り返し羽ばたくようになります。何度も…何度も…何度も…
一方、一つ向こうのケージでは、もう一羽のハトが同様の経緯を経て繰り返し行動を始めていました。ただし、そのハトは羽ばたきの代わりに、その場でクルクル回るという行動を取りました。

このような本質と全く関係のない行動は人間の世界にも多く見られます。
験担ぎと呼ばれるものの多くはこれと関係しています。ハトの脳とほぼ同じ行動をしているのです。初詣や御守り、おみくじは科学的には一切根拠がありません。しかし、これらは科学より長く生活に浸透しています。
節分に豆をまいたり巻き寿司を無言で一本食べることで病気にならないという考え方は時のワクチンよりも信用されるのです。