ある社会人大学院のゼミのワークショップを紹介する
教授が言った
「今日はここにいる8人で1つの物語を作ろう、ルールは1人1文、リレー小説の1文バージョンと思ってくれるとわかってくれるかな」
教授は続ける「物語は森の怪獣を倒すことを目的にしよう、このゴールだけは守るように」
ゼミ生8人は全員やるべきことを明確に理解できた。
そしてこの課題はあまり難しい課題ではないように感じた。
1番に指名された人がこうはじめた。
「勇者は森の入り口に立っていた」
その後、このように続いた
「右手に持った大きな剣の重みを感じていた」
「森の奥から何かうめき声のようなものが聞こえる」
「その声を聞きながら、色々ことが思い出された」
「1つは生まれたばかりの娘の事」
「もう一つは右腕の古傷のことだった」
「勇者は思った。この右腕で全力で振り下ろすことができるだろうか?」
「いろいろな思いを背負い一歩踏み出した」
「鳥が一斉に飛び立ったのが目に入る。」
「もう引き返せない」
「やるしかない」
「怪獣を倒して、無事に家に帰るんだ」
「娘をもう一度この手に抱きたい」
こんな調子で合作の物語が作り始められた。
しかし、私たちは10分たっても15分たっても怪獣と対面するところまで行かなかった。20分が過ぎたところで、教授が我々の作業を止めた。
ちょうど怪獣の不気味に光る目を視界に入れたところだった。
教授は言った。
「君たちは約20分使ってもまだ怪獣と戦うところまで行っていない」
これは事実だった
ところが、と教授が言葉を続ける
「・・・ところが、この課題を幼稚園児にやらせると、あっという間に怪獣と戦い始めるんだ。下手をすると2周する前に怪獣を倒してしまうこともある。君たちはもう10周以上しているが、まだ怪獣と対面もしていない。」
ここまで聞いてゼミ生から笑い声が漏れた。
教授は続けた「このことから何がわかるかな?」
私たち8人はそこから15分程度議論をし要点を4つに絞り発表した
.1、シンプルな考え方:幼稚園児は直感的でシンプルに考え、必要な行動を迅速にとることができる。一方、大人は情報の過多や過去の経験から複雑な思考を持ちがちで、行動を遅らせることがある。
2、目的の明確性:ゴールを迅速に達成するためには、目的を明確に持ち、それに向かってストレートに行動することが大切である。
3.、過度な慎重さ:大人は細部にこだわりすぎ、物語の本質や目的から逸れることがある。これは、現実のプロジェクトや仕事においても、細かい点にこだわり過ぎて大きな目標から逸れることがあることを示している。
4.、行動の遅延:計画や考えることも大切だが、それだけに時間を使い過ぎてしまうと、実際の行動が遅れることを教えている。
教授は満足そうにそれを聞き
逆に、と言った「逆に、幼稚園児にはこの作業はできないんだよ」と。